2015.9.14 そこに流れる音楽 
建築家の名前が付いた曲。ご存知ですか?

景観、少し対象を広げて建築と音楽について綴るコラムです。なかなかの綱渡り感、ドキドキ感満載でやっております。今回も少しだけお付き合いください。

さて。いきなりですが音楽もいろんなタイトルがありまして、人の名前が入っている曲名というのも結構あります。「ナオミの夢」「そんなヒロシに騙されて」「オリビアを聴きながら」…と挙げるとなんだか完全に自分の世代がバレてしまうのは致し方無いとして。

建築家の名前が付いた曲があるんですよ。それも、結構な大御所です。

しかもかなり有名な名盤の中に。ご存知でしょうか?

 

もったいぶってスミマセン。教えます。曲は「So Long, Frank Lloyd Wright」、歌っているのはSimon & Garfunkel 。

 

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フランク・ロイド・ライト(1867-1959)

Frank Lloyd Wright、フランク・ロイド・ライト(1867-1959)はアメリカの建築家。ル・コルビュジェ、ミース・ファン・デル・ローエなどととともに近代建築の巨匠と称される存在です。日本の旧帝国ホテルのライト館(1923年竣工)、米ピッツバーグ近郊の落水荘(カウフマン邸/1935年)、ニューヨークのグッゲンハイム美術館(1959年開館)などの建築で知られています。

歌っているのはサイモン&ガーファンクル。彼らの最高傑作の呼び声も高い現役時代のラストアルバム『明日に架ける橋』(1970年)。タイトルトラック名曲ですね。80年代に一気に表面化するワールドミュージック的な「コンドルは飛んで行く」とか、能天気でカラッとした「いとしのセシリア」とか、ライラライ♪な「ボクサー」とか、良く知られる佳曲がこれでもかと並ぶ、当時のS&Gの才能をあますことなく伝えるアルバムです。この作品をもって最盛期の2人はデュオを解消しソロの道を歩み始めていますが、実際はこのアルバムの後も期間限定の再結成ライブをするなど、現在進行形で音楽を続けています。

そんなアルバムの、昔で言うとLPレコードA面最後を飾っていたのが、「So Long, Frank Lloyd Wright」、邦題「フランク・ロイド・ライトに捧げる歌」という曲です。

この歌はポール・サイモンが1969年に書いたオリジナル。アメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトを題材にしています。実際にはライトはこの10年前に亡くなっており、本国でも再評価自体が起こっていたのではとは思います。ポール自身が書いた歌詞の中でも「才能が枯渇したと思ったら、立ち止まってあなたのことを考えてみます(意訳)」と、創造のインスピレーションの元になったような部分もあります。

ただ、ロイドの建築作品自体云々よりも、この曲が表現したいのは“比喩”だったのではというのが、現在では多数を占める意見となっています。

歌詞の内容にArchitectという言葉は出て来ますが、「いろんな建築が現れるけど、あなたの視点は変えないでね」と歌われています。これは諸説によると、当時建築を勉強していた相棒のアートの存在を、いわゆる「大先生」に例えたメッセージではと言われています。(アートはその後大学で美術史の学士号、数学の修士号を取っているそうです。インテリさんですね。)

 

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アナログLPのジャケット裏より

音楽的には最高のパートナーだったけれど、どうやら音楽性や方向性の違いから、袂を分かって歩み始めることになる2人。その段階まで来ると、お互いに素直には言えないこともあります。そんな想いを歌詞に託した…今みたいな時代だとそんな奥ゆかしさも、もどかしく見える感じもありますが。音楽的にもこの曲だけ、ボサノバ的なコード進行をつかったとても不思議な空気の曲です。意外に「アルバムでこの曲が一番好き」なんていう意見もあったりします。

 

この超名盤を手に取る機会があったら、是非耳を傾けていただければと思います。

 




橋口勝吉


1969年 宮崎県出身 情報誌や専門誌(音楽、演劇など)のライティング、編集、新聞記事執筆、広報業務などを経験。現在はCRIK副理事、専門学校非常勤講師(2001年〜)、コミセンわじろ地域活動応援課主任(2012年〜)