2015.6.8 そこに流れる音楽 
レコードジャケットの中にある景観(1)

ただの音楽好き、いやもっと正確に言うと塩化ヴィニールに刻まれた音、アナログレコードを聴くのが大好きであり続けているだけの筆者です。ここは景観コラムですし、まさか2回目以降の機会が頂けるとは思っておりませんでした。ありがとうございます。
引き続きご愛顧の程、よろしくお願いいたします。

 

30年前の1980年代後半。田舎町に住んでいた中学生の僕は、そのまちで当時おそらく1件しか無かった、あるレコード屋さんに偶然入ります。そこは横浜で修業を積んだNさんというオーナーがやっていた、いわゆる「中古レコード」のお店でした。昼飯代を浮かせた数百円ぐらいの資金力しかない中学生なので、この値段で本当に大丈夫なの?と聞いてみたら「おっちゃんの目は確かだから、針飛びとかしたら持っといで!」と怒られる始末。実際に店に並んでいるのは綺麗な状態のもので、少しでも盤に難があると「お前、これ持って帰れ!」とタダでくれるぐらいの人でした。その後、高校生から大学生にかけてはバイトで手伝いしたりと、長い付き合いになるのですが、それはまた別の話ということで。

 

そうやって数百円でやっとの想いで買ったレコードは、家にこっそり持ち帰って。土曜日の午後なんかに一人で聞く。それが当時の何よりも楽しみだったワケです。今考えても暗い部類の中学生ですが。親父の古い、全部一緒にくっついている家具調のステレオをもらったおかげで、騙し騙ししながらレコードを何度も聴いていました。それしかないんで、当然聴きながらぼーっと眺めているのはレコードジャケットになります。特に歌詞カードも解説も無い輸入盤のジャケットは、もう隅から隅まで、レベールまで穴があきそうなぐらい眺めて文字探して読むしかないわけです。完全にそこで間違えて、更にレコードにのめり込む中学生なのでした…。

 

ですから、英国と米国音楽が好きだった自分は、「この人達は何を食ってどういう風に生活したらこんな素敵な音が出せるんだろう?」そんなことばかり考えていました。
すみませんここでやっと、景観的な話になります。その頃にとても好きだったアルバムが、ウィングスの『ロンドン・タウン』という作品でした(1978年。版権に配慮してジャケット写真は載せません。残念)。ジャケもタワーブリッジが写り、いかにもテムズ川で撮りましたといったポール、リンダ、デニー(レイン)というメンバー写真ですが、「ロンドンの街の古くて汚れた地面に、銀の雨が降っている(意訳)」という歌詞が印象的なタイトルトラックも入っていて。頭の中で「ロンドンってこういうまちなんだろうなぁ」と、脳内で勝手に思い描いて聴いていました。

 

それから約20年後の2005年。新婚旅行でようやく憧れのロンドンに行くことができた自分は、知人のガイドでさまざまな場所へ観光に連れていってもらいました。そして一度は体験したほうが良いということで、テムズ川クルーズへ。有名なビッグベン(英国国会議事堂の時計台、エリザベス・タワー)の側から出発する、60分ぐらいの小さな旅でした。

 

テムズ川周辺

テムズ川周辺

 

ビッグベン

バリバリのおのぼりさんで恐縮なのですが、巨大な観覧車のあるロンドン・アイなど最新の建造物、古い沿岸のパブ、ロンドンブリッジ、ドームが美しいセントポール大聖堂、そして立派な舟が行き交う、その不思議な要素の混ざり具合が、いかにもこのまちっぽいなぁ、魅力的な場所だなぁととても感激したのを覚えています。
そしてその時の脳内に流れていたのは、言うまでもなく、20年前に聴いていた『ロンドン・タウン』のメロディでした。2月の寒い曇った日でしたが、あの頃穴が空くほど眺めていたジャケットの、タワーブリッジのある風景にこんな形で出会えるなんて。いいなぁと思った瞬間でした。

 

タワーブリッジ

タワーブリッジ

 

 

ただの観光日記的な内容ですみません。『ロンドン・タウン』のジャケット、是非検索して見てみてくださいね。

 

P.S.

この旅行の際に(一生に一度かも知れないので)アビーロードにも行ったのですが、横断歩道を撮る角度が難しすぎて…完全に道路の車を止めて立てる位置じゃないと、ジャケットのような写真は撮れないと思いました。もし撮れた方は、教えてくださいね。




橋口勝吉


1969年 宮崎県出身 情報誌や専門誌(音楽、演劇など)のライティング、編集、新聞記事執筆、広報業務などを経験。現在はCRIK副理事、専門学校非常勤講師(2001年〜)、コミセンわじろ地域活動応援課主任(2012年〜)