2017.5.22 くらしのにおい 
カメさん公園

あなたの家の近所に「カメさん公園」または「カメ公園」と呼ばれている公園はありませんか?
福岡市内には、他の地域と比較して「カメさん公園」と呼ばれる公園が沢山あります、子どもの頃、「カメさん公園」で遊んだ記憶のある40歳以下の人が福岡にはたくさんいるでしょう!
福岡市には正式な公園名称で「カメさん公園」と呼ばれる公園は存在しませんから、当然公園の愛称という事になります。大池公園のように水辺があってミドリガメやらニホンイシガメなんかが生息している公園という訳ではありません。公園の愛称はほとんどの場合、「ロケット公園」「アスレチック公園」「トンネル公園」などのように、その公園の最も特徴的な遊具によって決まります。その愛称が子ども達の間で広まっていき、その保護者へ伝染し、最終的には地域全体がその愛称を受け入れる事になるようです。

そう当然!「カメさん公園」にはカメ型の遊具が鎮座しています。

福岡市の公園や景観に詳しい方なら、なんとなく瞼の裏に浮かんでいるのではないでしょうか? 画像添付しておきましょう!

 

「春吉公園」のカメ遊具

天神から最も近くにあるカメさん公園「春吉公園」のカメ遊具です、近年リニューアルに伴い再塗装されて可愛く綺麗になっています。
この円墳を彷彿とさせるカメ型の複合遊具こそが、福岡市内に「カメさん公園」という愛称を持つ公園が無数に存在する要因となっています。

時代は第二次ベビーブーム真っ盛りの頃1960年代から1975年の16年間、福岡市も宅地開発などで人口が爆発的に増えた時期に1500㎡〜3000㎡のサイズの街区公園が沢山造られました。当時の公園は3種の神器と呼ばれた、すべり台、ブランコ、砂場などが整備され、加えて土管を用いたトンネルやグルグル回す事ができるスチール製の球体ジャングルジムなどが主流の頃に、福岡市内での複合型遊具のトップランナーとして造られたのがこの円墳型のカメ遊具です! バブル期になると何故か衰退して行くこのコンクリート製カメ型複合遊具をDIGO的な簡略化してCKYと呼ぶ事にします。

このCKYは僕が知っているだけでも「中央区春吉公園」「早良区紅葉山公園」「博多区池田公園」「中央区一本木公園」などに現存しており、とても子ども達に愛されている(良く利用されている)遊具だといえるでしょう。中心市街地にあるというのも、当時の住宅開発事情などを想像出来ますし、「南区長丘西公園」「下長尾公園」などの遊具は機能が同じで手足が出ていないカメ遊具にみえます。(本当は月や土星をイメージした遊具だと思います)

 

「紅葉山公園」のカメ遊具

「池田公園」のカメ遊具

「長丘西公園」

「下長尾公園」のカメ遊具

直径8m高さ約2.2mのコンクリートの丘に石や土管を埋め込み、チェーンや梯子によって頂上にのぼる楽しさまた、しっぽ型に広がる滑り台などは、高低差のすくない中心街区の公園にはとても楽しい遊具といえます。ちなみに同時期に整備された公園の中で高低差があるような公園には高低差を利用した滑り台はあっても、カメ遊具が造られることは少なかったようです。

また、このCKYは公園整備の残土活用としてつくられた可能性もあります、公園整備に欠かせないコンクリートなどを利用して造られている事もあってか、大きさの割にコストパフォーマンスにも優れているようです。素材的にも50年以上使用出来る素晴らしい遊具だと思います、捨てるものを利用してローコストで遊具をつくるというアイデアは当時の公園計画者の努力なのかもしれません。

このCKYがある公園をグーグルアース等の航空写真で眺めたり、現地調査すると不思議な点に気づかされます。
ひとつは、全てのカメ遊具の頭の位置が北を向いていることです、当初は「一本木CKY」は北西方向、「紅葉山CKY」は北北東方向を向いていたので、公園のアプローチと関係しているのだと考えていました。ところが、福岡市みどり推進課から公園図面を頂いたら、カメの頭は原則北向きのようです。これは、衛生面などを考えると滑り台と苔の生え方や下の砂場に太陽光を当てたいからであろうと納得しました。
さらに、潜望鏡のようなスチールのパイプが日時計の役割をしていたんじゃ無いかと考えるようになりました。真北を向いていると考えると当時の優秀な設計者の意図が読みとれるかのように、子ども達が自宅へ帰る時間を土管からの直射日光や、陰位置で知るなどの設計的工夫があるんじゃないかと考えるくらい天体学的なのです。

もうひとつは、全てのカメ遊具のデザインが類似しすぎていながらも、同じ形態になっていない事、土管の位置や自然石、チェーンロープの位置までほとんど同じ形態なのに、自然石のサイズや口の開き方などに微妙な違いが出ているようです。また、色や模様等の塗装は地域毎に色々と工夫されています、このディティールの違いは施工者の図面の読み方誤差のレベルと考えて良いのか、20年の間に個体進化をとげたのか、古い年代のCKYほど口を開いてない事に納得し、詳細記録を残したいので図面を起こしてみました。

カメ遊具図面

本来の遊具機能である滑り台部分はテラゾーで仕上がっており、結構スベリの良い楽しい滑り台です、放射状に広がり子ども達が手をつないで滑ったり登ったりしているところを見ると汎用性が高い遊具のようで、土管に籠っておしゃべりしたり、潜望鏡部分に登ったりと様々な遊び方が展開されています。

 

土管で遊ぶ女の子

「池田公園」のカメ遊具

滑り台であるしっぽ側に砂場があるということは、砂地でのウミガメの産卵を思い起こす事が出来ます、子ども達の間では砂場の砂を掘っていくと小さな子亀もしくは卵が出て来るという都市伝説も存在しているようです。
特に良く出来ているのはカメの顔に土管を使用し目を表現している所で、砂や汚れが溜まり涙のように汚れて行きます。まさにカメの産卵にふさわしい表情ゆたかなCKYが見れる訳です。ちなみに春吉公園では産卵用の砂場が撤去されゴムチップに変更された事もあって、泣く程の土汚れが目に溜まらないみたいです。

 

「紅葉山公園」のカメ遊具の涙

「春吉公園」のカメ遊具

そしてこのコンクリート製のカメ型複合遊具(CKY)公園遊具界の絶滅危惧種となっている事です。ここ5年程で多くのCKYが撤去され無くなっているという現状です。南区だけでも「天代公園」「塩原北公園」「清水南公園」「長住北公園」などからCKYが無くなりました。コンクリート製の遊具なので雨の日に滑ると怪我をするのかもしれませんし、グランドゴルフの波に飲まれ公園の中央にある8mの円墳型のマウンドは邪魔なので撤去されたのかもしれません。

 

「清水南公園」のカメ遊具

「清水南公園」の古いカメ遊具

ここからさらに、不思議な現象がおこります。「カメさん公園」という愛称が1人歩きして撤去後の公園にカメ系の遊具が再設置されるという現象です。FRP製のカメ型複合遊具(FKY)へと変身をとげる訳です。その解釈の仕方は公園設計者によって大きくねじ曲がっていきますが、なんとなく面白い景観をつくりだしていると言えるのかもしれません。特に「姪の浜明治通公園」は初代CKYとほぼ同スケールでよりカメらしさを追求した素晴らしい遊具であり、さらにバネ遊具などの小さな遊具すらカメのデザインに合わせる徹底ぶりに感動します。逆に「天代公園」のカメ遊具は激しい突っ込みを入れたくなるくらいです。

 

「長住北公園」のカメ遊具

「天代公園」の新しいカメ遊具

「姪の浜明治通公園」のカメ遊具

「姪の浜明治通公園」のカメのバネ遊具

公園に愛称が持ち込まれる事はすごく良い事で、地域の場所という感じがしますし、愛称をデザインコンセプトとして遊具をつくる事は良い事だと思います、ただ50年前のデザインと比較して景観的に良いものになってるかどうか、子ども達にとって自由度がある遊具なのか、時間的な補修コストを考えてあるかなど、本当に難しいと思いながらも絶滅していくコンクリート製カメ型複合遊具(CKY)が、ガラパゴスゾウガメに負けないくらい長生きしてくれる事を願うばかりでございます。

 




ogata


建築家、NPO法人九州コミュニティ研究所 副理事長、日本キチ学会代表、九州産業大学非常勤講師。
著書:「秘密基地のつくり方」(2012)