2015.4.5 FUBA INTERVIEW 

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景観として操作できる範囲を、どう捕らえるか
−(先程から先生のお話に出ていますが)まちの景観と絵画は、深い関係があるのでしょうか。

「例えば、ヨーロッパでは印象派の絵画がありますし、日本では広重の描いた浮世絵を世界中の人が知っています。これらには、建物、道、河川や海の水面、樹木や山の緑が組み合わされ、普段の生活をしている時に見える景観が結構描かれているのです。ヨーロッパの印象派と浮世絵では、細かく分類すると違いますが、遠景に見える山を描いたものが多いなど、全体の構図や基本的なで共通する部分が多く、現在の福岡で見ることができるような景観もあります。

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東海道五十三次「御油」の計測例
「広重の浮世絵風景画と景観デザイン」萩島哲・坂井猛・鵤心治

新しくつくる街の計画では、通常、合意された「あるべき姿、ビジョン」に向かって、機能、構造、経済、法制等の様々な与条件を解くかたちで、「どこに」「何を」つくることができるか、が決まります。その後、各敷地の建物や街路樹などの景観を構成する要素の大きさやかたちについて、「どのように」つくるかが決まっていきます。つまり、多くの場合、各要素の大筋が決まったところで、まとまって目に見えるかたち、視覚的に見える環境の総和として、はじめて景観となって登場するのです。このとき、ものをまとめていく技術としての景観学があり、その道具立てについては昔から研究されてきました。テクスト景観としての絵画に関する研究もその一部です。絵画という二次元に投影すると、樹木や水面がある面積をもって物量として見えて来ますよね。それがどういう構成なのか、多くの絵画に共通する内容、計画に使える内容を導き出すことが僕の研究グループの仕事でした。景観を物量として、操作できる範囲をどう捕らえていくかがポイントになります。景観に時間軸を持ち込んだシークエンスの研究もでてきて、立体的に考えるようになり、それらをどう感じるかという心の分析まで含めて一つの分野が成立しています。
「風景」というキーワードがあります。観る人の心の中に景観が入って来たときに、ああ快適でよかった、これは気持ち悪いとか、そういう、心的、主観的なものまでを含むときに、風景と言う言い方をしています。

 

−福岡はまだまだこれから。終わっていない。

「福岡市は、古くは博多部で太閤の町割りがあり、明治の頃には、『広幅員の通りが必要だ』と天神で渡辺通りをつくった方々の先見の明があります。細い道路に建物をぎゅっと建ててしまうと、交通渋滞を引き起こしてしまい、景観以前にちょっと違ったことになりますよね。細い道路、路地は、ヒューマンスケールの良さがありますが、都市の幹線としては不向きですので、他の日本の都市と同様に、戦争で被災したところから、少しずつ直してきました。先人たちの残したものを大事にしながら骨格がつくられてきた都市のひとつだと思いますね。
ただ、まだ十分ではないと思います。人口規模で言うと、福岡市は152万人ですが、連担して人が住んでいる都市圏の人口を見ると、糸島から筑紫野、宗像、北九州まで繋がり280万人になります。この規模は、例えば対岸の釜山、台北、欧米ではベルリンなど、首都や第2の都市と肩を並べるのです。海外のこれらの都市では、昔から建築までちゃんとつくり込んで立派です。
そういう目で見ると、福岡ではもっとやるべきことがあると思います。たとえば、博多埠頭のターミナルビルは、つくられた当時はすばらしかったと思いますが、今観ると、福岡都市圏の海の玄関口としては何か物足りない。先々で、つくりかえていく必要性を感じます。福岡空港もそうでしたが、ようやく再整備が始まりました。このような街の「顔」となるような大切な場所や、都市を再生させるのに効果的な場所がいくつかあり、少しずつつくりかえていく必要があります。地区レベルの広いエリアを整備し、まとめる際のよりどころとして、景観設計に関する技術があります。

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福岡市役所前広場

福岡市役所前では、菊竹清訓氏(※3)によって、景観設計の点から広場としてのスケールがしっかり押さえられていますが、その構成を維持しつつ、大屋根をかけて多くのイベントに使われるようになっています。これまでつくられてきた様々な公共空間を、スケール感を大事にしつつ、つくりこんで使い続ける。どうしても合わないところは、景観に至るまでの様々な条件を慎重に考えてつくりかえていく。これはなかなか終わらない作業です。」

※3 菊竹清訓 福岡県久留米市出身。早稲田大学理工学部建築学科卒業。1953年に菊竹清訓建築設計事務所を開設。2011年没。メタボリズムを提唱した建築家の一人。出雲大社庁の舎で日本建築学会賞作品賞。

坂井教授プロフィール
九州大学新キャンパス計画推進室 教授・副室長/九州大学人間環境学府 教授/九州大学工学部 建築学科 教授
専門分野: 都市計画、都市設計、景観設計、公共空間計画、キャンパス計画
詳細情報は http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K001325/



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フクオカをぐるっと360°捉え直すことを目的としたこの「サンビャクロクジュウド」という名のデザインチームは、NPOと公益社団法人と株式会社の3社が組んだちょっと変わったユニットです。
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