2015.11.4 景色を輝かせるもの 1
フェルメールと夕焼け

景観と言われると、フェルメールのあの絵が想い浮かぶ。

 

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世界一美しい絵のひとつと言われる「デルフトの眺望」だ。
この絵には不思議な緊張感がある。その理由のひとつは二人の婦人の存在だ。試しに二人を指で隠して見てみると、その緊張感が無くなる。次は街並みで、左半分は運河に面した高い建物で全て薄暗く描かれ、右半分は手前の低い建物の上に、奥側の高い建物が見える。それを強調するように、奥側の建物にだけ陽が当たり光り輝いている。最後は運河で、写り込んだ街並みの影をかき消すように、船が横たわる。フェルメールは、風景の中に、まさにその瞬間を描き込むことによって、風景を景観に昇華させることに成功している。
話は変わって、うちから見る夕焼けの話だ。うちのリビングから見る夕焼けは本当にキレイでって話しをすると、こいつまた、手前味噌なって人は言うかもしれないけど、それにはちゃんと訳がある。リビングからの夕焼けはいつも見れるわけではない。見れるのは、夕方家に居て、かつ、晴れた日の日没後のわずかな時間。この希少性が夕焼けをさらに美しく見せてくれる。

 

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食卓に並んだ夕食と共においしいビールをいただく。そしてふと外を見ると、淡いブルーに染まった空が下に行くにしたがってグラデーションでオレンジ色に繋がり、それを反射した雲が広がる。空は刻一刻と表情を変え、暗い夜が訪れる。そのわずかな時間、普段の見慣れた景色が、見るだけの価値を持った特色の有る景色に変貌する。

景観を楽しむ為には、ある程度の余裕が必要だ。自然と融合した人工物や、他人の敷地に美しさを感じる為には、これまで色んなものを見てきた、というある種の自信も必要となる。
景観について語るのは、他人を誉めるのに少し似ている。




末松淳一


1971年に生まれてから、ずっと博多在住。
電機メーカー勤務で、趣味は読書。
愛読書は「かもめのジョナサン」
大切なのは、固有名詞。