2015.8.10 景観の作法 
建築と設計の役割①

子供の頃、建物は全て大工さんが建てるものだと思っていました。実際、私の実家も祖父と大工さんが話し合いながら増築工事をやっていたのを覚えています。色んな職人さんたちが仕上げていくその綺麗な仕事に子供ながらに感動を覚えました。

「設計」という言葉に出会ったのは小学生の時、低学年だったか私が通う学校のプールの新築工事でした。工事看板に設計者○○と書いてあったのが最初でしょうか。

 

私の仕事を例に設計の話をしたいと思います。ある日、雨が降っていましたが朝早く高速・フェリーと乗り継いであるお寺に到着。とても立派なお寺で全体を眺めるのに時間がかかりました。今回は庫裏(くり=お寺の住居分部)の新築計画に声がかかりました。5年前、この地域で和食の料理屋さんを完成させた事がご縁で、話だけでもと呼んでいただきました。

最初は計画や建物の話はさておき、最近の日本の経済や政治、この先のお寺の地域社会におけるあり方などお話をしてその日は終わり。これはその地域の特性や考え方を知るために必要だと考えています。そして帰る前に計画敷地を見学して、いつもの様にスケッチを取りました。写真よりもスケッチの方がその時の感覚が鮮明に残るので、感じた事を言葉と共に残す、私のいつもの最初の作業です。

建築は景色を作る。建築は周りの景観をよく見つめることでより一層良いものになっていきます。

 

挿絵①

その日、事務所に戻るともう夜になっていました。今日の社員の仕事に目を通して明日の指示をして・・・。さてと、今日のお寺の件を記憶が鮮明なうちに簡単ではありますがイメージを形にしてみます。周りの環境やお隣の状況など、今でないと記憶が薄れていくのです。この最初の時の「イメージスケッチのデザイン」が実際の建築工事まで残っていくのは非常に興味深いです。

スケジュールを考えるのも私たちの重要な仕事です。再来週もう一度お会いしてお客さんの要望を聞き、本格的に提案(プレゼンテーション)を作成する時間を計算してみる。この提案の段階で建築の強さや電気・給排水・機械設備の計画を考えておく事も重要です。この事を「基本設計」といいます。

こうやって提案が気に入っていただくと本格的に設計図を描いていくわけです。そのことを私たちの業界では「実施設計」といい、設計の仕事の中で多くの時間をかける作業となります。実施設計とは実際に施工をする為に正確に寸法を示し材料を指定する設計の事です。ここでの仕事は実に多くの専門的な設計事務所(構造設計事務所・設備設計事務所)や建築資材のメーカーさんとの話し合いをしながら進めていきます。

勿論、予算の調整も考えながら骨組(構造)を決定し、使用する設備そして材料のサンプルを多く吟味しながら決め込んでいき進めます。

この時、最初にお話ししました「イメージスケッチのデザイン」が設計の基本になっています。それほど最初のイメージは重要なものです。

 

挿絵②

このように実施設計に多くの時間を費やして設計図が出来上がるのですが、この図面を元に施工会社を選択し工事へと進んでいきます。

設計の仕事の役割とは、映画製作に例えると次のようなものです。

基本設計・・・原作

実施設計・・・脚本

工事現場・・・撮影現場

最後の工事現場での私たちの仕事を「工事監理業務」といます。設計図通りの施工が行われているか、問題はないかなど施工会社と連携しながらの重要な仕事です。それは次回詳しくお話します。

 

つまり映画を作るように構想を考え、沢山の人が関わりながら完成へと導いていく。それが設計事務所の仕事なのです。皆さんに少しでも建築や設計の仕事を知ってもらえればうれしく思います。




寿久佐々木


一級建築士・管理建築士
1988.05 ヤマトマネキン環境開発本部
1998.10 設計事務所
2000.11 佐々木設計室 設立
2008.11 アートレ建築空間 一級建築士事務所 設立