2019.11.29 街を想う時 
次の街へ

 

神奈川県横浜市から福岡に移り住んで6年。

福岡市の西に位置するJR九大学研都市駅のそばに現在も住まい、 日常を送っている。
この場所は6年間で急激に人口が増え、ものすごいスピードで街が作られ変化していった。
もう少しゆっくり変わってくれればと速さに焦りを感じながら、その様子を夢中でカメラに収めてきた。

6年前。慣れ親しんだ横浜の地を離れた時のこと、
次にたどり着いた新しい土地で自然と気持ちのスイッチが切り替わり、この街に溶け込み向き合い続けてきたこと。
文章と写真で綴っていきたいと思う。

 

家族が転勤族の私にとって この福岡もいつまでいられるのかわからない、
日程未定の少し長めの日常の旅をしている感覚だ。
この旅の間どこに住むのがいいか 通勤時間のこと そして周りの環境はどうなのか「街選び」について様々なことを考える。
短期間なのか長期間になるのかわからないが、どちらにしても新しい生活をスタートさせる居場所。
大切な事でじっくり選んでいたいが、あまりのんびりしている時間もなかった。

 

福岡に土地勘もなく「街選び 家探し」は結局知人と不動産会社におまかせすることにして
希望の間取り、築10年以内で最寄り駅から徒歩10分以内、買い物が近くでできる事などを伝えた。
密かな願いとして
1日のスタートは東からの陽の光が射し込む中で朝食がとれると嬉しいし
美味しいパン屋さんがあればなおいいし
窓から外を見た時 鮮やかな原色がぶつかる看板が並ぶより豊かな緑が近くに感じられれば、、、と求めるものをあげるときりがない。

 

引っ越しまでは2週間ほど。様々な手続きや片付け 挨拶回り、そしてしばらく会えなくなると思うと友人たちとも一緒に過ごしたかった。
夕方中華街で食事をする約束をして、その前に港町横浜をもう1度歩きたいとカメラを持って早めに出かけた。

横浜の街は仕事でも個人的な撮影でもよく訪れ見慣れた景色だが、何度来ても新たに反応できるものが多くあった。

横浜開港時代から外国人居留地として今も当時の暮らしの雰囲気が残る山手エリアの西洋館。
横浜港が一望できる港が見える丘公園。
食の文化がぎゅっと詰まった人の熱量が高い中華街。
国の有形文化財である重厚な歴史的建築物がある一方、陸から海へと流れるような曲線と直線の形状がユニークなビルが連なる、みなとみらい駅周辺。
またJR桜木町を挟んで海と反対側をしばらく行くと、時代とともに閉ざされてしまった街があり(最近はアートの街として形を変えて存在している)
そして特によく出かけた野毛山動物園(なんと無料!)は1〜2時間で回れてしまう小さな動物園でそのぶん動物たちを真横で感じられた。

港町横浜は街ごとの異なる文化が大きな器の中で混在している、そんな魅力ある場所だ。

 

このスポットがあたる眩しい中心部から、私の住まいまでは電車と徒歩を合わせて30分ほどのところにあった。
たった30分の間に光と色のコントラストが下がって駅前には高層マンションや商店街があったが、自宅が近付くにつれ落ち着いた住宅街へと雰囲気が変わる。

近くには昭和30年代に建てられた県営団地があり、敷地内の庭には時間をかけて手入れをされてきたであろう野菜や花々が、
絶えることなく植えられ住まう人の優しさが感じられた。
用具入れには誰かが残していったサッカーの練習の跡があった。
樹形に親しみを感じていた大きな椿。季節の巡りを教えてもらっていた。
時間が経ち塗り替えられているうちにアートに見えてきた作業小屋。

温もりのある人の気配をあちらこちらに感じながらこの街で暮らしてきた。

 

 

想いを寄せてきたこれらの私的な風景が季節を変え時間を変えて、ネガフイルムの中に何度も何度も登場する。
外にあるだけで家の中にあるものとなんら変わりなく毎日大切に見つめてきた。
感傷にひたるというより想いを残している場所はないか探し、離れる前にもう一度撮りながら、
このまま消えずに、そして大きく変わらないでいてほしいと願った。

 

『 where I belong  』yokohama 2013

 

そんなことをしているうちに、物件の候補がメールで毎日届いていた。相当な数だった。もういい加減決めなくてはいけなかった。

その中にいい意味でひっかかりを持った物件があった。【新しい街 人気エリア糸島に近い 九大学研都市】
送られてきた画像を見て、まったく新しい生活がそこで始まるという想像がうっすらとできた。

3月に入ったのに肌寒くコートが必要で、まだまだ浅い春の日。
伊都の町 九大学研都市に初めて降り立った。

近くに大きなショッピングモールや数件のコンビニエンスストアがあり、マンションも建ち始めていた。
新しい街というよりこれから作られるという感じだった。白く乾いた土の空き地が遠くまで続いている。
まだ色の少なかった街の空に入居者募集のカラフルなアドバルーンが顔を出した。

私はこの街をすぐに撮り始めたいと思った。(つづく)

 

『 先に在るもの 』fukuoka 2013




小栗祐子


写真家 大阪府出身
写真家 田中仁氏に師事。
2013年 神奈川県より福岡に拠点を移し 活動中。
趣味はデパ地下巡り。