2019.5.28 世界を旅してきた中で 
ランドスケープのつくられ方(その6)

 

一切信用されていない余所者だからこそ、地元“絶対やらない”ことをやり遂げる

 

 

これは湯沢に限ったことではなく、日本(特に地方)の特徴であり性格でもあるのだが、本当に余所者は信用されていない。会社を立ち上げると同時に、初陣となるプロジェクトが動き始めていた。宣言通り「まず▲▲を私が主催します。コンセプトは●●としてみました」を具体化することから着手しはじめた。もちろん、テーマは”発酵”である。

 

(以下、企画趣旨の抜粋)

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”発酵人による、発酵人のための、発酵イベント『Fermentators Week』”

11月3日-11日の9日間、秋田県湯沢市で開催します。

2018年11月3〜11日に、「発酵醸造」をテーマにした酒、食、カンファレンス、音楽、さらには各地域での共催イベント等、多くのコンテンツが詰まった9日間のイベント『Fermentators Week (ファーメンテーターズ・ウィーク/略称:FW)』を、開催します。

発酵醸造をテーマといっても、単にお酒や味噌、醤油、漬物だけでなく、地域にある様々な資源を「発酵」させ、その価値を再創造し、広く発信&体験していただける場とすることを目的としています。そして、本イベントに関わった多くのFermentators(個性を醸す人)とともに、「発酵」を核とした地域発展のあり方を模索していきます。

本イベントのプログラムは、東北選りすぐりの発酵人と共に発酵の未来とクリエイティブ産業としての可能性を探究するカンファレンス「World Fermentators Summit / 世界発酵人会議」、湯沢市内各地や近隣地域を巡り、各地域ならではの観光資源や食文化に触れながら美酒美食を楽しむ「Fermentators Dinner/ 発酵人晩餐会」、メイン会場のお披露目となるレセプションパーティーののち、「発酵 × 音楽」を題材に音楽イベントを開催する「Fermentators Music Night / 発酵人ミュージックナイト」、秋田、東北の流通限定の日本酒を中心に100種を超えるお酒や発酵フード、発酵調味料を揃え、発酵を食べて、呑んで、体験することのできる「Fermentators Festival / 発酵人感謝祭」の四部構成となっております。”皆さまのご来場をお待ちしております”。(https://www.fermentators.com/about/)

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もちろん、上記は企画としてもほぼ完成された構想を文面化しているので、具体性は断然に増しているが、それでもこれだけではまだどんな企画なのか?また、英語表記されているだけでも拒否反応を示す地元民は、とにかく多くたくさんのお叱りを実際に受けた。

また、最大の誤算はコンセプトをウェブサイト(fermentators.com)にて好評し、さらに、1年以上湯沢地域の強烈なリーダーとしても慕われている高橋さんと湯沢にて会合を開いてきた実績や京野さんという地元の経済界の名士にもなりうるパートナーと会社を立ち上げリスクを背負ったことを開示できたことで、一年前とは比べものにならないほどの信用を勝ち取っていたかのように考えいた。しかし、それは全くの錯覚であった。

結局、人は最後の最後、自分の目でイベントが開催されたのを見て初めて信用をして、協力の手を差し伸べてくれるのだと思う。ただ、理由を上げればきりがないほどだということは、今では理解できる。例えば、ダボス国際会議顔負けな勢いで”発酵人”会議を行ったり、20年使われていなかった酒造所を利活用する話、また、何よりも開催期間が9日間もの長丁場で行われることや開催地をあえて湯沢市の顔の一つであり交通の弁としても接続しやすい湯沢駅から2つ先のさらにローカル駅から歩いて20分のわかりづらいところで催されることからしても、どう考えても「できっこない」という声が強くなってしまう。

 

 

多くの地方で催されているイベントというのは”発酵イベント=味噌・醤油・酒が行政貸出んおテントで販売されたり試飲・試食ができるブースなどが出店されるのだろう”という想像の範疇を超えることは多くに人にとっては難しいのが事実。アイフォンを手にするまで私たちが携帯がいかに進化していくのか?を考えつけなかったのとさほど変わりはないのだろう。だからこその創造区なのであると、私はここで力強く言い切りたいのである。

 

 

「応援しているよ!」から「あいつを紹介する」「値引きしてやる」「勝手にやったった」に変化

 

 

イベント開催を宣言してから3ヶ月はとにかく毎日がプレッシャーや山積する残タスクを効率よく片付けつつ、お酒などの仕入費用など含め700万円近くもの予算をかき集めることに失踪した。当初は都市部への認知拡大を目的として少なくない額面(300万円)をクラウドファンディングで呼びかけた。開催宣言から60日もない短期間の中で集める必要があった。募集終了まで残り1週間の段階で達成率は30%も満たなかったほどに全く共感・支援をいただけていなかったイベントである。そしてあろうことか、この段階でイベント開催2週間前。ほぼファイナルコールがかかっている最中での格闘であった。

 

 

All or Nothing、つまり目標達成しない限りお金を手にすることはできない。一方で、都会に住む人の中で”発酵”や”湯沢”に興味のある人は乏しい。また、ブランディングの観点からも”おねだり”はご法度。かつて別の企画で提案ではなくおねだりをした経験があるが、その方々との関係性はある種服従関係のようにある程度の間、「あの時の恩は絶対」という思考が抜けないために気疲れしてしまう。さらに、おねだりされる側も根拠が手助けとなってしまうために企画趣旨や主催者をビジネス的に応援したりコラボレーションをする機会も望めない。結果としていただいたお金以上にコストが高くなってしまう。そういった中で残された1週間でできることといえば、一斉送信でメールをすることでもSNSなどで広告拡散することでもなく、そういう時だからこそまず、①興味関心がある人を絞り出し②その人に100文字以内で関わることの利益、価値を提案すること③”共感”をベースに参加方法を説明し、できれば個人メッセージで”あなた”が共感してくれたように行動をしてくれる人に、メッセージを送ってほしい旨を伝えること。残り1週間だからこそ、人間の心理=自分がメッセージを受ける側であれば、お金を入れる以上に誰かに伝えたりすることは面倒なのである。また、30%しか達成していないという理由は通常のビジネスシーンであれば営業マンであるあなたが月末の締め日の1週間前に上司に対して「達成率が30%なのでどうにか上司の乗客をご紹介いただけませんか?」と聞いているようなものである。

 

 

実際、ギリギリの行動こそなるべく丁寧に(勿論限界はあるのだが)対応したり、自ら足を運んで面と向かって説明をすることを続けた。するとどうだろうか、神風のごとくみるみるうちに目標金額に近づいていき、最終的には締め切りの7分前に目標達成をするという、おそらくクラウドファンディング史上にもあまり例をもたないギリギリのタイミングで、なんとか目標達成することができた。達成したから言えることであるが、多くの場合、人はギリギリまでうごけないという心理構造はある。それは自分ごとになっていないからである。丁寧に行動をすることが強調されてしまいそうだが、最も大切なことは、自分が手がけている創造区を利用する価値を、あなたごとに変換してあげる努力を惜しんではならないとうことである。また、創造区で展開される企画や事業が細部までしっかりとイメージできていなかったり、どこか他人任せになっていたり、試算ができていなかったりする場合は共感者は集まらない。一番のレバレッジは構想を具体的なストーリーにして伝えることでしかない。一度形にして、なおかつ結果を出す前の”初陣”はどの人にとっても憂鬱な状況に追い込まれるが、そのネガティブな感情こそ創造区が出来上がった後の希望やワクワク感でのみしか吹き飛ばせないと思う。

 

初陣を制した者がその地域の景観に影響を与える

 

 

クラウドファンディングの達成から、イベントを支える様相が大きく変わった。(https://readyfor.jp/projects/fermentators)

地域内外にイベント開催の現実性が一気に高まったのである。これまでの「がんばってください!」の人たちが、開催日に近づくにつれて手を差し出してくれる、チラシを配ってくれる、SNSなどで猛烈にアピールしてくれる、ボランティアを申し出てくれる….etc様々な”協力”が生まれいったのである。もう一つは、地域の長でもある市長が、全面的に応援の姿勢を示してくれた。結果として、9日の間に2,000人を超える人に来場いただいた。

 

 

 

また、広告や交通機関の利用なども足し合わせると、4,000万円をゆうに超えるほどの経済価値を作り出すことができた。この数字が大きいということではなく、草の根的活動から産声をあげ、営利企業(民間)としてイベントを成立させ、成果を出したことがきっかけで、それまでは半信半疑だった地域の政財界の関係者にも良き波紋を広げられ、開催後の挨拶回りでは具体的な協業や遊休不動産の利活用プランの依頼、行政からは人的リソース以外にも補助金などの有効活用の打診があり、銀行からは地域ブランディングを促す事業ファンドの組成の話にも繋がっていった。

メインイベント開催地であるヤマモが本拠地を置く湯沢市岩崎では、ヤマモ味噌醤油醸造元と私たちの株式会社リブル、さらに同じ町内会で150年以上経営されている石孫本店(味噌醤油)、そしてライフスタイルショップやカフェなどを多角的に経営されるMomotoseと4社にて、地域ファンドを組成することを目的とした岩崎発酵するまちづくり協議会を立ち上げたことは、狭い地域内(地方)ではいがみ合う方が簡単だ。東北を代表し150年以上の歴史を持つ両社(ヤマモと石孫本店)が手を取り合うという構造は、絶好の機会となりうる。

先に少し触れているが、”発酵ツーリズム”の商品化を目指すプロジェクトを2018年8月から開始した。

特に海外インバウンドを増やすという目的で、ヤマモ高橋さんを筆頭事業者、私がプロデューサーとして関わる形で、経済産業省にバックアップしていただき、BrandLandJapan(https://brandlandjapan.com/project2018/p1.php)に採択され、既に欧米数都市へのYamamo Factory Tour(http://yamamo1867.com/ila/)をギャラリーオープンと同時にスタートしている。

 

また、当初年に一度の開催と釘打って展開したFermentators Week(イベント)は、湯沢の特色でもある、春夏秋冬を発酵を切り口に味わう絶好のプレゼンテーションの場であり、長期的にはこのイベントがきっかけとなって、新たな創造区をこの地域にもたらす個人との接点を見出したいと考えた。その結果、年に4回の開催に修正した。そして、丁度3週間前に第二回目をスキー場を舞台に開催できた。東京からは直通のバスをチャーターしたツアー企画も実験的に販売した。(https://bnana.jp/products/48hours-48/)

湯沢の3月上旬は、極寒x雪もあることは先に述べた。そんな中、あえて雪山で発酵を体感体験する醍醐味は、参加者にのみわかりうる満足感だろう。ただ、少なくともこれまで社会課題として捕らえられてきた”雪”であり、”積雪”をあえて資源として経済効果を作り出せたことは、大いなる一歩である。運営母体である株式会社リブルから持ち出している現金は、それほど低くはない。つまり、P/L上ではマイナスではあるが、B/Sでは創業する前よりも多くの資産を持ち始めている。リブルの本業は、あくまで湯沢市内の遊休不動産を再発酵させることであるのだが、そのためには好条件での遊休不動産との接点がまず必要となる。

 

 

棚から牡丹餅とはいいたくないが、2回のイベントが物件を獲得するための良き営業窓口として、機能したと見立てればいかがだろうか?現にいただいた7物件のうち、一軒目の遊休不動産については、2019年に入ってから再開発が開始された。クリエイティブブロックとして、これから世界から豪腕なシェフやガストロニミーたちが立ち寄れる、フーディストホテルや発酵をテーマとしたギャラリーの開設。そして、世界から集うシェフたちが滞在中に創発されて提案される、一夜限りの発酵レストランも併設する予定だ。現在、ファイナンスなども進めている。この他にも、第2回目の会場近くでは、旅館の運営権の譲渡などの相談を不動産オーナーからの直接受けている。地域には限られたリソースがあるとはよく言われるが、タイミングや運営権、そしてファイナンスやビジネスロジックが合致しない限りは”リスク”でしかない。その見極めを間違えると致命傷にもなることは常に念頭に置いておく必要があるだろう。つまり、その逆もしかりである。

 

 

また、関係人口という言葉は、非常に使い勝手がよい単語である。それ自体になんら批判があるわけではないが、ランドスケープを超えて、特に地域経営の一部に携わるような個人は、やはり自分なりにその言葉の解釈をする必要がある。シンプルに言えば、”経験”をもって”実態”を掴むことが必要だろう。今回、私たちが展開した発酵イベントは、強いて言えば9日間限定の創造区と言えるが、この創造区が周辺地域に定性的にもたらす最大の効果は、得体の知れぬ未来のモチベーションを周辺住民や参加者から引き出せたことであり、さらに私たちが独自路線で事業を展開していくことが、連鎖的波紋のごとく他者へ響いていくことで、関係人口がそのまま新たな経済価値を生み出す経済人口へと変化していくということは、創造区画がもたらす効果でありパロメーターである。




拓人本村


創造区画家。1984年4月28日東京生まれ。

生活者の想像力を掻き立て、関わりあう人の創造性が発揮される一区画"Creative One Block"を都市・地方へ宿すプロジェクトを多数展開。
専門は地域経営・都市開発。趣味は多拠点居住。特技は旅。

2009年株式会社グランマ創業。主にアジア8カ国にて地域開発・経営に従事。国内では東京と東北を往き来しながら、秋田県南に位置する湯沢に”Fermentation City”を企画。また、同地域で発酵ギークたちが集う年に4回のカルチャーフェスを企画運営する。(https://www.fermentators.com/)
都内では自由大学キュレーターとして複数の講義を担当。(https://freedom-univ.com/people/takuto-motomura/)また、世の中に新たな"思索"を提示するキュレーターとして世界を変えるデザイン展、Design For Freedom等、展覧会やムーブメントの企画を運営する。

基本的に個人の時代をいかに豊かに生きられるか?をテーマにRadicalな思想や発想をもつ先駆者たちを世界でおいかけ、複数メディアで執筆・寄稿する。(https://bizzine.jp/article/corner/109)