2018.8.10 そこに流れる音楽 
エコーという名の、音のスパイス

恐らく久しぶりの登場となります、橋口です。

音楽と建物、景観の話を、ちょっとだけ語らせていただきます。箸休めにでも。

建築とジャズの緊張感、レコードジャケットの思い出、歌詞などの話をこれまでにもさせていただきました。今日は「響き(ひびき)」の話です。

 

わかりやすい言葉は「エコー」。鼻歌が響くお風呂場の感じ。温泉の大浴場とかだと、桶のぶつかる音も響くので、もっとわかりやすいかも知れません。または学生の頃に大声を出すとよく響いた室内の螺旋階段など。あの閉じた空間で歌を唄うと、自分の歌声が違うもののように響き渡る感じ。みなさんそんな経験は持っていませんでしょうか。僕はあります。

こんなにいいマイクじゃないんですが、家庭用のもっとチープなチープなマイクを想像ください。でもね、それでも1万以上してたんですよ。エコーを誘発する電池内臓でした。

 

そして子供の頃。カセットテープとマイクが我が家にやってきた。1970年代後半、遂にカラオケのブームが到来。それまで聴くだけだった歌謡曲を、なんと自分で唄うことができる奇跡の技術。そりゃ唄うよね。その時に購入したマイクは、実は未だに家のどこかにあるのですが、手元についていた小さいスイッチをオンにすると、いかにも人工的な響き、エコーがウィーンと発動します。あまりの安っぽさに笑いが出るんですけど。現在でもカラオケボックスのマイクは、望めば元の音がわからなくなるぐらいのエコーをかけることができます。そのくらい、このエコーという存在は唄、音楽を上手に、あるいは気持ち良く聴かせてくれる名脇役なのです。

昔の音楽の練習スタジオ、部室には、こんな感じのでっかいエフェクターがあった(既に鳴らない置物のときもあったけど)。エーストーンとかエルクとか、懐かしい方もおられますよね。

 

この現在の電気的というか、人工的につくる前のエコーは、実は実際に広い部屋に音楽を流して、そこでの響きを拾うというナチュラルな方法も取られていました。「ルームエコー」というのが呼び名のようですが。ナチュラルなエコーを得たいという発想で、英語ではecho room、echo chamber(エコーチェンバー)、「残響(反響)室」という部屋で呼ばれます。部屋は音を反射する硬いコンクリートやタイルなどで内装を処理したりするなど、スタジオによっても個性があり、アメリカではロサンゼルスやRCAスタジオでもこの部屋が設備されていたようです。

アビーロード第2スタジオの伝説の「エコーチェンバー(エコールーム)」。実はクラシックやサントラでも名録音が多い、世界中の音楽好きに注目されている場所ですね。ここにビートルズの録音したての音が響いていたんだなと思うと、感慨深い…オタですみません。

 

で、個人的にこの響きの部屋は一番興味があって、見てみたかったのが、英国にあるEMIアビーロード第2スタジオのエコーチェンバー。近年ではインタラクティヴなGoogleさんのおかげで、その伝説の部屋とかも拝めるようになったのですが。今でこそデジタルのディレイとかリヴァーブとか「エフェクト(効果)」と呼ばれる音の響はつくれるのですが。実際に響き渡る音を拾ってからのエコーって、やはり味があるというか。良い感じに音を良いものにしてくれます。

 

相当長い前置きになりました。ではそれと、景観が、何が関係あるか?ということですよね。

 

自然の中にもエコーがあります。一番ポピュラーなのが、軽い登山でちょっと試したくなる「やまびこ」「こだま」という現象です。エコーの語源が、言葉尻を繰り返すことしかできなくなったギリシア神話の妖精の名前なのですが、やまびこ(山彦)も妖怪が応えていたというところが語源であるのが面白いです。

なかなかの風光明媚!和歌山県の日高川町。この赤いゲートが印象的な吊り橋も、なかなかスリリングな感じなんだそうです。いつか行きたい。

 

「やまびこ」「名所」というキーワードで検索すると、和歌山県の日高郡日高川町が、ヤッホーポイントという日本有数のやまびこポイントを誇る町として出て来ます。やまびこがよく戻ってくる条件は、風光明媚さや標高の高さではなく、対岸の約300m先ぐらいのところに、声が跳ね返る斜面とか山肌があることだと言われています。それより遠すぎると聞こえにくくなり、近いと短く叫ばないといけないとのこと。いい「ヤッホー」という声、音を体験できる景観が、いろんな条件を満たすという偶然ではありますが存在するんですね。本州だし、和歌山って新幹線で通過したことしかない。

ヤッホーポイントは5つらしいですが、自分でいろんなポイントを探す楽しさもあるらしい。となりのウサギの置物は謎ですが、やまびこの精かも。いつかご挨拶したいですね。

 

かなり遠いようなのですが、いつか行ってみたいなと思っています。

打てば、叫べば、鳴らせば響く。いい歳なので、僕もはやくそうなりたいなぁ。

 

 




橋口勝吉


1969年 宮崎県出身 情報誌や専門誌(音楽、演劇など)のライティング、編集、新聞記事執筆、広報業務などを経験。現在はCRIK副理事、専門学校非常勤講師(2001年〜)、コミセンわじろ地域活動応援課主任(2012年〜)