2015.5.5 くらしのにおい 
おくがい階だん

 

高層マンションの屋外避難階段は、都市景観をつくる要素として非常に面白い立ち位置にあると思っている。
そもそも、垂直的な移動装置である「階段」自体を個人的に面白いと思っているのだから当然である。
まず、階段とは蹴上げ(垂直高さ)と踏面(水平面)によって構成される、移動の為の構造体なのだが、
ケアゲ、フミヅラ、ケコミ、アゲウラなど一般社会では口にしない難しい単語が満載なのである。
また、学校の怪談などで有名な階段の話はケアゲを数えたのかフミヅラを数えたかで数字が違うというオチ!
建築大学の快男子が授業で間違うアルアルなのである。
話を本筋に戻すと、普段あまり使われない避難の為の階段が都市景観的には重要な役割をもっているのではないだろうか?
建物の最上階まで届いていながら、くらしの中であまり利用されない、悲しいにおいのする「屋外階段」におもいを寄せてみる!
エレベータを利用せずに階段で移動できる階数は一般的に4階まで(おがた個人調べ)というデータが正しいとするなら、
5階建て以上の集合住宅にはエレベータが設置されているのが世の常(昔の公団住宅は5階建てまでエレベータがないけど)。
ちなみに、6階建ての2階に住んでいる僕は、エレベータをほぼ使わず屋外階段を徒歩で移動している。
低層階(理論上5階以下)の人間以外は使おうとも思わない、利用される事が日常的に少ないスペースでもある為に中途半端な階高(9階とか)の踊り場に人影をみつけると「アレッ?のぞき?下着泥棒?」って心配になる時がある。

 

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今回は個人的に好きな鉄筋コンクリート造(RC造)の折返し型の屋外避難階段の外観に着目してみた。

屋外避難階段という性質上、安全性の面でたくさんの規定がある。

隣地境界線からの離れにはじまり、水平方向、垂直方向の開放性、また蹴上げや踏面の最低寸法、階段幅の規定など。

そのせいか外観上は、遠目に見ると中途半端に開放されたボリュームで、エレベータに隣接している場合が多いため窓の無い固まりの傍の、半分透けたタワー型の建築ボリュームでとてもシンボリックな形態といえる。(どこに階段があるか、パッと見分かるような形態)

バルコニーはデザイン性が高く、水平で日当りが良い陽性だとすると、「屋外階段」は完全に垂直な陰性なのだ。

街の中で道に迷った場合は切り株の年輪ではなく、階段で北の方角が分かるくらい、おおよそ北側に位置するので、方向音痴の人には便利なモノだと思う。(大きな通りに面するビルや、北側に海が広がるリゾートマンション等は例外)

 

 

最後に、もっとも伝えたい話は、カッコイイ屋外避難階段はニューハーフのおねえさんと似ているという事実!

何度も言う様に屋外避難階段は、その開放性と安全面の問題から構造が非常に難しい。階段の壁柱や、特に下からの見上げとなる踊り場を支える、持ち出し梁は取り外すのがとても大変!
屋内階段や鉄骨階段になると構造上つくりやすいので「上げ裏」はスッキリして見える。持ち出し梁が避難階段にとって必要か否か、避難的には全く関係が無いが美しいに越した事は無い。

細く見えるように、ナナメになっていたり、少しだけ短くして手摺面から面落ちしていたりと、建築デザイナーは知恵を絞って考えてはいるが、中途半端な状態が多いのが現状なのだ。中途半端にデザインするぐらいなら、とっちゃいなさいよ!的な考え方が必要なのだと思っている。

持ち出し梁を取ってしまうと、次は階段上げ裏のラインが揃っているのかが気になりだす。簡単に言うが、これをやるためには階段の踏面の前後調整が必要となり、30cm程度平面が長くなる。

当然、工事費に反映されるのでお金がかかる。(モチダシバリが無くなる分は安いのかな?)

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屋外避難階段の外観をスッキリ綺麗に見せる為には、パッと見では分からない凄い努力と覚悟が必要なのだ、

若い頃、フィリピンパブで知り合った綺麗なニューハーフのおねえさんの改造手術&美しく見せる為の努力を聴いた時と同じ、金銭的、時間的な努力と安全性を保ちながらリスクを選択する覚悟!

屋外避難階段が美しくデザインされた質の高い建築を見ると、そういう系のお店に行きたくなるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

以下は、巷でみつけたいろいろな「おくがい階だん」。

 

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ogata


建築家、NPO法人九州コミュニティ研究所 副理事長、日本キチ学会代表、九州産業大学非常勤講師。
著書:「秘密基地のつくり方」(2012)