2016.8.8 景観計画をもってまちに出よう 
“なれの果て”の姿〜景観形成活動を考える〜

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「景観は、そこに暮らす人々の“なれの果て”の姿」と僕に語ってくれた人がいました。短いテキストですが、「景観」という概念を、言い当てていると感じました。

— なれの果て

この言葉は、一般的には、あまりよいイメージで使われていませんが、私が腑に落ちたのは、いま、この瞬間を切り取ってまちを見た時に、そこに暮らす人々の普段の暮らしぶりや価値観そのものが視覚的・雰囲気的にあらわされている様子を言い当てていると感じたからです。そういう視点でまちを見てみると、長年引き継がれてきた歴史や文化を大切にしている地区では、生活や文化が日々の暮らしのなかに普通に受け継がれて、良好な景観となっています。まさに景観は、そこに暮らす人の、暮らしぶりや活動の積み重ねそのものと言えそうです。

景観計画に重ね合わせてみると、景観形成方針や景観形成基準は、地区の景観資源や生活文化を踏まえ、将来の景観の姿を示しています。そして、それを実現しようとする市民の活動によって、よりよい“なれの果て”の姿の創出を目指そうとしています。

 

1980年代、頻繁に使っていた「景観形成活動」という言葉は、1990年代半ばくらいから、「景観まちづくり」という言葉に移行していったような記憶があります。あらためて、「景観」の定義(国土交通省)を見てみましょう。

 

景観は、それぞれの地域ごとの歴史、地勢や生態系などの風土、文化や伝統、私達一人ひとりの暮らしや経済活動等と、技術の進歩や法律等の制度などが背景となってつくられるもの。

良好な景観は、地域の個性や特色をわかりやすく特徴づけるものであり、人々の地域に対する愛着やふるさと意識を育む。

身の回りの景観の良さは、潤いある魅力的で豊かな生活環境の創出に貢献する。

美しく個性的な景観は、観光をはじめ、国内や世界各地との交流を活発にする役割を担う。

景観まちづくりは、自分たちのまちの景観の魅力を楽しみ、貴重な資産として次世代に残せるように、わがまちの景観を維持・継承・改善するための様々な取り組み。現在の良好な景観を大事に保全することだけでなく、新たに、現代的で美しく魅力的な景観をつくりだすことも含む。

清掃や緑化など、日々の暮らしに根ざした、まちの景観を整えるための地道な活動も、良好な景観まちづくりに貢献している。

出展:「市民のための景観まちづくり読本」より抜粋

 

定義の中には、「景観」が、“意識”にもとづく活動によって、より良い“なれの果て”となるための、ヒントが盛り込まれています。

 

福岡市での景観形成活動を、【公共空間】、【民有空間】の2つの切り口で見てみましょう。

 

【公共空間の景観形成活動】
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〜芸術性の香り高い都市空間を作りたい〜

市内のあちこちで、よく見かける彫刻。この彫刻が設置され始めたのは、約30年前です。「彫刻のあるまちづくり」は、広く親しまれ市民の誇りとなるような芸術性の香り豊かな都市空間を目指し1983年から始まりました。第1号は、1983年4月に、水上公園に設置された「風のプリズム」(作者:新宮 晋)、この年、はじめて福岡に来て、水上公園に設置された彫刻を見た時、福岡市の文化度の高さに、カルチャーショックを感じたのを今も鮮明に覚えています。現在、25体の彫刻が設置されています。

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〜安全で快適な憩い空間に再生したい〜

警固公園は、造園家の設計による、福岡のランドスケープシーンの一時代を築いた公園でしたが、園内の死角の多さから、犯罪の防止と迷惑行為の抑制が課題となっていました、まさに公園利用者の文化度の低下に伴う“なれの果て”。これを受け、警固公園の再整備事業が実施され、平成24年12月にリニューアルオープンしました。警固公園周辺の関係者で構成された「警固公園対策会議」の協議の中で、隣接するソラリア・プラザも公園に顔を向けるなど、一体性を大切にしたことで空間の価値が高まりました。
警固公園は、第26回福岡市都市景観賞の大賞平成28年度都市景観大賞(国土交通省)の都市空間部門の優秀賞を受賞しています。

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〜花を植えて、来訪者をもてなしたい〜

「緑」は、ストレスを軽減させ快適性を向上させます。ゆとりや安らぎ、くつろぎに満ちた生活環境を創出し、市民の心身をいやし、健康を増進させる機能を有しています。そうした緑あふれるまちを創出しようと、NPO・ボランティア団体、企業のCSRなど、様々なボランティア活動により、福岡のまちは、ホスピタリティにあふれた気持ちのよい、都市空間が生まれています。荒れた場所を放っておかない、まちの玄関口の魅力を高めるなど、福岡のまちには、たくさんの景観形成活動が展開されています。

【民有空間の景観形成活動】
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〜洗練された都市空間を作りたい〜

幹線道路沿道は、何もしなければ、大型の屋外広告物が乱立する景観となりがちです。天神北交差点に立地する、天神FUTATA THE FLAGは、屋外広告物を派手にして、単に目立たせ、主張するという発想ではなく、建物本体との一体性や交差点に面する景観上重要な立地にあることを踏まえたデザインにより洗練された都市景観をリードしています。
第25回都市景観賞 屋外広告部門を受賞

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〜緑あふれる、快適な住宅地にしたい〜

都市景観形成地区の指定の第1号となった百道浜、地行浜の両地区からなる「シーサイドももち」。戸建地区の景観形成方針は「建築協定・緑化協定等によって創出されつつある戸建住宅地区にふさわしい多様な個性とゆとりを持つまちなみの形成及び保全を図る。緑あふれる快適な居住環境の形成・保全を図る。」としています。住民が地区の将来像を共有し、良好な住環境を維持・育成していく活動が日々続けられています。都市景観形成地区(1996年指定)
1996年度都市景観大賞の「建設大臣賞」都市景観100選を受賞しています。

 

 

「芸術文化を感じる」、「安全に」、「緑豊かに」、「洗練している」など、多様な価値感を背景とする景観形成活動が行われています。景観形成活動を通じて、そこに暮らす人々の価値観や文化を表現することで、景観の中に、より良い変化を生み出すことができます。

景観形成活動は、未来のまちの景観をつくる、“果てることのない”デザイン活動ではないでしょうか。

 

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矢舖雅史


広島県の瀬戸内海に浮かぶ島に祖を持つ。東京で都市計画コンサルタントに勤務し、様々なマスタープランの策定に関わる。福岡市に異動後、市民参加のまちづくりを経験し、現在は、ボランティアセンターの職員として勤務。