2016.6.6 よしなし-ごと 5
見覚えのあるレインコート

あっという間に、季節は梅雨どきですね。
雨の日の景色って、なかなかいいと思いませんか。
真っ青に晴れわたるよりも、どこか内面的というか。
人生の憂い…。なんて、感じてしまいます。
とか、カッコつけたりしましたが、バイク通勤なので、本当はうんざりです(笑)
ということで、うだうだ言わず、本編に入りましょう。

さっそく、アバウトな質問ですが、
あなたにとって、街はどこから始まりますか?
自分が住む街であれば、自身の家を起点にすることもあるでしょうが、
一転、よその街となると、そおもいかないわけです。

うーん…、質問が分かりにくいですね。もう少し、丁寧に言ってみますと、

「この街ってどお?」などと、街の記憶や印象、
あるいは評価などを気にするとき、
あなたは、いったいどこから、その思考をスタートしますか?

僕の場合は、やっぱり「駅」だと思います。
残念ながら「港」とか「空港」に降り立つ経験は少ないので、
電車でたどり着く場所、「駅」こそが、
もっとも、第一印象のありかで、街の始まりっぽい気がします。

こんなことを言い出す訳は、僕が生まれた田舎まちにあります。
10数年前のことですが、唯一のローカル線の「駅」を廃線で失い、
すっかり顔のない街になってしまった。そんな気がしてならないのです。
もちろん象徴的な場所、良い場所は、たくさんあるのですが、
どれも散発的で断片的。輪郭がないのです。
記憶をどこから巡らせれば良いのかが、わからなくなってしまいました。
「バス停」があるじゃないか!と言われても、多すぎてなんだか。
街の印象の担い手としては、すこし役不足な気がします…。

 

はい。ではでは、極端な仮説ではありますが、
今回の講釈では、街の印象の大部分を「駅」が決めてしまうのだと、
言ってしまおうと思います。

言ってしまうのだからこそ、
街の中で、「駅」が位置するポジションが気になります。
理想的なのは、街のセントラルよりもサイドエンド。
全体を見渡せるような位置取りの方が、シックリくるのではないでしょうか。

 

東京の街は、よいですね。福岡から言うと左手が正面。背中は海です。
有名なレンガの駅舎が迎えてくれます。
あくまでもイメージですが、皇居を中心に、山手線の輪が丸く広がっています。
そのほかに。京都の街も美しい。福岡から言うと左手が正面。
すぐ目の前に、ロウソク(京都タワー)が立っています。
ギャッと、低層階の建物が碁盤の目に沿って張り巡らされて。
いけませんね…。これも中心は京都御所でした。

 

東京駅

<東京駅>やっぱり我が国の首都ですね。威厳があります。

 

逆にうまくいってない(ごめんなさい)例で言うと、
最近、オバマさんの来訪で話題になった広島や
同じく最近、震災で苦しんでいる熊本の街。
どちらも、駅を出てすぐに折れなきゃいけない感じが、
勝手口から入ってるような印象です。
偶然ですがどちらも、路面電車がお迎えに来てくれます。

この、半ば言いがかりのような説ですが、
なにも、大都市に限ったことではありません。
わが福岡の地域内においても、けっこう当てはまるので、紹介します。
例えば、大橋と薬院。街の規模では50歩100歩ですが、
大橋のデンとした「わが街へようこそ!」というレイアウトに比べて、
薬院のちょっとスカした感じ。待ち合わせをするにも、
「薬院のどこ?六つ角?大通り?そこまで行くと渡辺どおりでしょ…」的な、
どことなく、所在無げな印象です。

 

大橋駅

<大橋駅>駅前広場の真ん中の大きな木が迎えてくれます。

 

 

薬院駅

<薬院駅>駅の建物ですが、どこを撮影していいか迷いました。ちなみに、私も薬院近隣の住民です。

 

セントラルの例は、西鉄の福岡(天神)駅。
着いた感はありますが、街の中央に入ってしまうので、
向き合う印象はないですね。地下鉄の駅はどれもこんな感じです。

もうひとつ、少し南下して久留米の街でいうならば、
鉄道が2つ(JRと西鉄)乗り入れていますが、街の出迎え感で言うと、
アーケードへの入り口に位置する西鉄駅のほうが断然です。
この駅が、街の印象を握っていると思います。

いろんな駅をあげましたが、その中でもかなり良いのが、
フクオカの入り口「博多駅」です。1963年(昭和38年)12月に、
街から遠ざかる感じ(それまでは地下鉄祇園駅付近)で、
現在の場所へ大移転し、50年余の月日を経て、
そのツラ構えは、完璧に近づいていると思います。

 

博多駅サイン-2

 

この駅の正面は、もちろん海側(北側)の博多口。
(筑紫口関係者のみなさん、ごめんなさい。実は、僕もそっち派です…)
リニューアルされたばかりの駅舎を出ると、
こちらも大改修を終えたばかりの大きな広場があります。
一年中、食の催しやアーティストのライブ、特産品の売り出しが行われ、
夜には、ワインやビールを楽しむイベントで盛り上がります。
まるで「どんたく」な賑わいは、
観光客に、「お祭り好きの博多っ子」という第一印象を
与えることに十分でしょう。

 

博多駅ライブ-2

きらきらライブ。

 

右手ななめにまっすぐ、ベイサイドまで抜けるのが「大博通り」。
左手を進むと、こちらもななめに。住吉神社や薬院に抜ける「住吉通り」。
偶然でしょうけど、さきほどサイドエンドが良い!…と言いましたが、
この線で囲ったところが、第一印象に類するフクオカの街と言えそうです。
つまり博多駅は街のサイドエンドのポジション。
サッカーでいう、コーナーフラッグのような場所。な、気がします。

 

大博どおり-2

大博通り。海の向こうに見えているのは海の中道です。

 

google mapより

google mapより

 

それと、もう一つ。「確実に偶然」だと強調しておきますが、
博多駅から正面に伸びる直線上には、
ちょうど、おでんの串刺しのように、フクオカのランドマークが並びます。
ハードルで例えると、1つ目がキャナルシティ。その2が中洲・春吉の屋台街。
その3が、福岡市役所&天神のデパート街。その4が、大濠公園&舞鶴城。
そして延長線上に、その5の福岡タワー&ヤフオクドーム。
下の写真では、高い建物しか見えませんが、本当に直線上なのです。
一日をかけて、歩いて巡るにもほどよいのが、福博の街の良いところですね。
(サッカー場やら、おでんやら、ハードルやら…。忙しくてたいへんです)

 

博多駅屋上からの写真。道路の突き当たりにある緑色の建物がキャナルシティ。その上が白位建物が市役所。その上に福岡タワーとヤフオクドームが見えます。

博多駅屋上からの写真。道路の突き当たりにある緑色の建物がキャナルシティ。その上が白い建物が市役所。その上に福岡タワーとヤフオクドームが見えます。

 

出迎えムードもレイアウトもバッチリです。
あとは、景観の重要な要素である、建物はどうでしょうか!?
僕は、5年前の博多駅舎の建て替え。
(ちょうど、五郎丸さんがCMをしてるので思い出しましたが)
新たな出来栄えに、かなりがっかりしたことを覚えています。

 

宇宙船-2

 

人形-2

 

ヘンリームーア-2

有名なヘンリームーアの彫刻。改修前より一段上に上がりました。なんだか白々しい。

 

建物を評論する知識も言葉もないのですが、
「なんか、下品…」って思ったのです。
有名な建築家に託したりして、ちゃんとイメージを作ればいいのに…。
と、嘆きながら枕を濡らしたものです(笑)
しかし、よくよく考えると、建物って、中にいると見えないんですね。
降り立った街を歩き始めた人の、「背中にあるもの」だとしたら、
けっこういいかもなと思うようになりました。
とくに波型の屋根のあたりとか、
なんだか、「不動明王」の背中にある炎みたいです。

 

博多駅表紙-2

 

博多駅2-2

うねってる屋根。用途は不明。

 

それよりもやはり、駅から出た時に目に付く建物は、
「福岡相互銀行本店」の名で建設されたオレンジ色の建物で決まりでしょう。
独特のテクスチャーの外壁は、インドから運ばれた砂岩。
一度目にすると、「福岡だ」と認識できる建物だと思います。
設計は、世界に知られる建築家・磯崎新。
「都市の彫刻を」という、スケールが大きな注文をうけた60年代末、
彼はまだ、30代の若さだったそうです。すごいですね…。

 

福岡相互銀行-2

 

建築物の他にも、複数の屋外彫刻や
世界を代表する作家の絵画を鑑賞できる展示室など、
この街のオープニングアクトとして、ふさわしい存在だと思います。

 

銀行構造-2

銀行彫刻-2

銀行テクスチャー-2

 

最近では、KITTEや○I○Iも開業して、
ますますの賑わいを見せている博多駅。
だけど、これって「街の中心」には、ならないんだよねって
勝手にニヤニヤしています。

ということで、次回はおそらく最終回。
夏ですね。福岡も博多も…。

予告もままならない感じですが、
まとまらないだけで、書きたいことは満載です。
この続きは、次回の講釈で。




中村 善輝


1973年生。福岡県福津市(旧津屋崎町) 出身。工務店の長男として生まれ、建築家への道を嘱望されるも、数学への苦手意識を克服できず挫折。憧れの女子の一言から大きく方向を転換し、人文学部フランス語学科に入学。その後、外国語も苦手だったことが判明し、迷子になる。