2016.5.23 景観計画をもってまちに出よう 
この先、海! のその先に

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今回は、港湾ゾーンに出かけてきました。

福岡市の景観は、背振山系の山並みを背景に、北側に海が開けているという豊かな自然環境によって特徴づけられています。港湾ゾーンは、そうした福岡市の景観の中で、海と陸が接するウォーターフロントと呼ばれているところです。

皆さんは、福岡市のウォーターフロントというとどんな景観が浮かびますか?

シーサイドももちや愛宕浜、ベイサイドプレイス、マリンメッセなどの景観が浮かぶ人が多いのではないでしょうか?

港湾ゾーンは、「臨港地区」という区域に指定されているエリア(下図の色がついている部分)です。福岡の物流・人流の玄関口となる場所ですが、船を利用したり、働いたりする人たちを除くと、ウォーターフロントの中でもあまり馴染みのない場所かもしれません。

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博多港港湾地区及び分区指定図


この「臨港地区」は、港湾の役割を果たすために、港湾法又は都市計画法に基づいて指定した地区で、港湾の様々な機能をそれぞれ十分に発揮させるため、目的の異なる建物が無秩序に混在しないよう、「商港区」「特殊物資港区」「工業港区」「保安港区」の4つに機能別に区域分けされています。

 

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<商港区>
旅客又は一般の貨物を取り扱わせることを目的とする区域で、旅客ターミナルやベイサイドプレイシュアなどの商業施設や倉庫などが立地するエリアです。


 

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<工業港区>
工場その他工業用施設を設置させることを目的とする区域で、大規模な備蓄施設や工業機械などが立地するエリアです。


 

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<特殊物資港区>
石炭、鉱石、土砂などを取り扱わせることを目的とする区域です。


 

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<保安港区>
爆発物その他の危険物を取り扱わせることを目的とする区域で、燃料タンクなどの巨大な施設が立地しています。


 

そんな視点で港湾ゾーンを眺めてみると、目的や役割にあった建築物や工作物によって形成されている景観は、福岡市の都市景観の中でも、機能的でピュアな景観といえるかもしれません。

 

そんな港湾ゾーンの景観形成の考え方は、「海からの眺望を大切にするとともに、後背市街地や博多港の自然環境と調和した港の景観形成」を図ることとなっています。

景観形成の作法は、博多湾の自然環境と調和した美しい港づくりを進めるため、海からの眺望を大切にするとともに、まじかに感じられる背振の山並みを背景とする市街地との調和を図る観点から、色彩への配慮や緑化等による修景に努めることとしています。さらに。博多埠頭、中央埠頭においては、アジアをはじめとした海外から多くの方が訪れる海の玄関口として、またコンベンション機能が集積する賑わいの場として、博多らしさやおもてなしを感じる景観づくりに努めることなど、船からの眺望を配慮したものになっています。

船からの眺望を配慮する背景には、海の玄関口としての重要性が高まっていることが挙げられます。それは、クルーズ客船の寄港実績からもみてとれます。2008年(平成20年)の35隻から、2015年(平成27年)には、186隻を数えています。7年間で約5倍、船のトン数をみても、167,800トン(QUANTUM OF THE SEAS)など、世界で5本の指に入るような大型客船も頻繁に寄港しています。まさに、海の玄関口です。

 

寄港数

参照:福岡市営渡船HP:博多港クルーズ客船寄港実績データ

 

博多港に入港する船は、例外なく市街地の背景にある山並みを眺め、福岡に着いたことを実感しているのでしょう。

 

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QUANTUM OF THE SEASの寄港
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アイランドシティに入港する貨物船

 


景観計画の作法では、そうした客船に乗っている人たちが最初に見る福岡市の景観、もしかしたら最初の日本の景観を良好なものに誘導することを想定しています。

なかなか大型客船から、福岡のまちを望むことはできませんが、疑似体験ができる、お得な航路があります。ベイサイドプレイスから志賀島に向かう、市営渡船です。およそ30分間の船旅は、景観計画の作法が目指す、港湾ゾーンの景観を見ることができます。

一度、出かけてみてはいかでしょうか?

あわせて、船から眺める風景の素敵なコラムは、こちら

 

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「港湾ゾーン」を、視点をかえて陸側からアプローチしてみましょう。

海からの歓迎ムードに対して、実際に現地に行って見ると、一般市民はあまり歓迎されない場所のようです。福岡市を地図でみると市街地に面して博多湾が面し、都心からも近いように感じられます。そう思って実際に海に向かって進んで行くと、もう少しというところで、立ち入り禁止の看板が立ちはだかります。「この先、海!」のその先は、そんなに簡単に海際まで行かせてもらえる場所ではないようです。でもそれは、先ほども触れたように、「港湾ゾーン」の大切な役割ゆえなのです。

 

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禁止のお願い
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絶対禁止

 


一般の人の立ち入りを望まない場所ですが、工場萌えの遺伝子を有する、私たちのようなものにとっては、機能そのものが形となった、ヒューマンスケールを超えた構造物による景観がある、魅力的な場所なのです。「港湾ゾーン」は、天神と博多湾の間にあるダイナミックな工場萌え景観の聖地なのです。

 

※MG_0659キリンクレーン
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シンクロナイズドクレーン

 


「この先、海!」のもう一つのその先、将来の「港湾ゾーン」は、どうなっていくのでしょうか?

「港湾ゾーン」は、貨物などを中心とする物流機能が牽引していた時代から、人や情報の玄関として交流機能の重要性が高まっています。

「港湾ゾーン」は、福岡のウォーターフロント地区として、天神・渡辺通地区、博多駅周辺地区に並ぶ、賑わいある都心の新たな拠点として、位置づけられています。そして、世界中から人々をひきつけ、アジアの活力を取り込み、アジアの中で存在感のある地区を目指して、大きく変化しようとしています。

福岡市が発表した計画では、コンサートホールやホテルなどからなる複合施設「福岡サンパレス」を解体し、大博通りを延長、コンベンションホール「マリンメッセ福岡」の北側を通り、博多港中央埠頭まで道路を連結します。一部はバス専用道路となり、サンパレスの代替施設は、現在地より港寄りに整備され、隣接地には国際展示場を整備、MICE機能(国際コンベンション機能)を強化されます。

また、交通事業者などと協力し、天神などから博多港までBRT(バス高速輸送システム)を整備する計画もあるようです。

福岡市は、サンパレス代替施設と国際展示場の完成は2020年頃を、全ての事業の完成目標は20~30年後としています。

これから、「港湾ゾーン」は、長い時間をかけて、福岡市の新しい賑わいの拠点として大きな変貌を遂げていきます。

 

海と陸が接するこのゾーンがどのような姿になっていくかの手がかりは、「景観計画」の中に記されているのです。

景観計画を持って、ベイサイドプレイスから出る渡船にのって、アジアの玄関口となるこのゾーンの将来の姿に思いを巡らしてみませんか?

 

今回は、これから大きな変貌を遂げるであろう、ウォーターフロント「港湾ゾーン」にスポットをあててみました。

景観計画に記された景観の作法は、福岡らしさを活かした景観形成を進めていく上で、これからも大切な役割を担っていくのです。

きっと…

 

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矢舖雅史


広島県出身.。
都市計画コンサルタントで、市街地整備計画、景観計画、福祉のまちづくり計画等のマスタープランの策定に関わる。
現在、NPO法人九州コミュニティ研究所職員として勤務。