2016.2.23 景観の作法 
建築と設計の役割②

【お疲れ様です】博多駅に出張から夕方に帰ってくると大きな声で声を掛けられる。

博多駅の警察官の方、コンコースでもう何年も。その一言で少し明るくなる様に感じます。

言葉の本質よりもみんな一日いろいろあって:ふー!:とため息をつく、そのため息を吹き飛ばしてくれる。そんな言葉に頭を下げると気持ちが良い。これもまた福岡の景観でしょう。

 

前回お話をしました建築と設計の役割の後半、【工事監理】という仕事も【お疲れ様です】から始まるのです。実は同じような建築の仕事に【現場管理】と呼ばれるものがありますが、よく同じことだと思われます。しかしまったく違う事なのです。

工事監理・・・設計図通り工事が行われているか確認も含め、コストコントロールはうまく行われているかなど設計事務所の重要な仕事です。

現場管理・・・いわゆる現場監督のことです。人員・原価・工程など工事現場を動かす責任者、建築会社の重要な仕事です。

 

この工事監理のもう一つ大事な仕事は、私たちのイメージ・デザインを現場サイドに伝える作業も含みます。同じ設計図でも【工事監理】者が違うと出来上がりが違ってしまうほど神経を使う作業です。簡単に言うと同じ素材でも作り方によって表現が変わってきます。明るい感じ、シックな感じ、健康的な、雰囲気が良い、などなど設計図面では表現出来ないものを現場管理(建築会社)に伝えるそういうイメージだと考えて下さい。

 

そのために現場用語という難解な言葉があるのも事実、これが全国、色んな地域で多少の違いはありながら存在します。

ある日、福岡県のリフォーム現場での一コマです。

 

「柱が一つ転んどるっですよ。どげんしますか?」

「んー、構造的な柱じゃ無いから殺して、柱間を構造合板で脳天からくぎ打ちしていきましょうか。」

「ばってん、そげんすれば他の壁よりその壁が勝つですよ?」

「そうたいね、その分下地ふかして、ツラツラに納めれば。」

 

何の事やら・・・しかしこの業界ではいたって普通の会話なのです。

建築の学校を卒業して最初にぶつかる建築現場用語の応酬。何年間かはメモすら取れず苦労します。

この会話を一般的な表現に直してみると・・・

「柱が一本、斜めに倒れています、どうしましょうか?」

「んー、力が加わっていない柱なので、斜めでも問題ないから、撤去せずに柱と柱の間の壁に、強い材料を釘で仕上げ面から打ち付けて、頑丈にしましょうか。」

「しかし、そうすると他の壁よりその壁が前に出てきますよ」

「そうですね、じゃあ、他の壁の下地を厚くして、表面を揃えるように仕上げましょう」

と、話し合いをしているのです。

 

挿絵1

どの業種にも専門用語はありますが、建築業界の用語は非常に日本的な表現を使うことが多いのも興味深いところです。昔から続く職人さんたちの言葉が今に残るからだと思います、この言葉たちも建築現場の景観かもしれません。

このような細かい現場での打合せを含め、私たちが設計したイメージを実現できるように【工事監理】を行っていきます。前々回の私のウェブマガジン・建築と設計の役割①でお話したように工事現場は映画製作でいうと撮影現場。

どのように脚本を表現しようか、コスト的なものは、適した作り方は、などなど映画製作でいうと監督でもある現場管理者と話をしながら進めます。

それを現場管理者は職人さんに伝え、職人さんが表現をしながら一つの建物は出来上がっていきます。

 

建築と設計の役割とは、最初の企画段階から工事現場までその建物の誕生に深く関わる仕事です。最近ではライフサイクルコスト(一つの建物が誕生してから解体されるまでの建設費や維持費そして解体費)を考える事も重要になってきました。

なかなか表には出ない【工事監理】の仕事、読んで頂けたら嬉しいです。

 

挿絵 2




寿久佐々木


一級建築士・管理建築士
1988.05 ヤマトマネキン環境開発本部
1998.10 設計事務所
2000.11 佐々木設計室 設立
2008.11 アートレ建築空間 一級建築士事務所 設立