2015.4.3 景観の作法 
建築の美しい見方

街には色々な建築物がたくさんあります。というより建物がたくさんあるので街が出来ていくのでしょう。建築物とは建築基準法で:土地に定着する工作物のうち屋根及び柱若しくは壁を有するもの:とあります。つまりはそのほとんどが建築物なのです。そんな多様な建築物の設計者が言う(私の個人的な意見ですが)正しい見方をお伝えします。

 

設計者が考える美しい建築のひとつに「ラインが揃った建築物」というものがあります。何のことかとお思いでしょう。たとえば窓、上端揃(うわばそろ)い(上のラインに合わせる事)とか下端(したば)合(あ)わせ(下のラインに合わせる事)とか専門的にはそう言います。窓ひとつとっても高さをどこに合わせながら配置すべきか横方向のバランスはどうかなど何かを基準にまたはどこかの箇所にすべてを合わせつつ、あるストーリーを思い描きながら考えていきます。

それが上手く出来ている建築を見ると一応に設計者は:通ってるね:とうなずきます。通るとはすなわち基準、揃っている事です。建築用語では通り芯とか壁の通りとかよくこの単語が登場します。近年ではその逆をいくランダムに何かを配置する手法もありますがやはりそれも何かを基準に考えられています。

なぜラインを揃えたいのか考えました。

実は設計図というものは敷地配置図・平面図・立面図・断面図まあそれに仕上げ(材料や素材など)を記した図面が基本になっています。その中の立面図すなわち建物を東西南北それぞれ遠くから望遠レンズでみた景色。その面の水平投影図が立面図というものです。人間の目には決して見えない物で描かれているのです。これをちゃんと見るには300メートル先から建物の高さの真ん中をまっすぐ見ることが必要です。それができそうなのは、その物に飛んでくる鳥ぐらいでしょう。しかし鳥が本当にそう見えてるのかは、今度聞いてみます。

話がそれましたがその立面図で建物のデザインを考えていくという事です。無論人間の目の高さは1M30cmから1M50cmほど、その高さから上下がどのように見えるかを複雑に考えながらですが、基本的にはその面を見ながらのデザインとなります。そうなると色んな線が沢山出てくるのですがそれが非常に気になる。屋根のラインと軒の出・壁のつなぎ目と窓の位置などなど何とか揃えたいと思いそうしながら諸問題にぶつかり線を消しそして揃えていきます勿論建物一周ぐるりと。斜めの屋根などは大変です実際に見える感じと設計図では全く感じが違います。模型を作りながら考え抜いて、そして「よし通った!」満足の極みです。

建築書籍とその他の建築が写った書籍を見てみると明らかに違いがあります。ぜひ一度本屋さんの建築専門コーナーの書籍を見てみて下さい。ほとんどが水平・垂直が綺麗にとれていて真っ直ぐに写っています。建築写真家の技術によるものです。

とするとその建築のある面をまっすぐに見た方が一番きれいに見えるという事になります。建築物の横方向の真ん中に立ち水平に見てみて下さい、実に綺麗に見えるものです。

sasaki_p街中あるいは建築物の前で建物から一定距離を置き横方向にカニのように一歩ずつスライドしている人がいたら、それは建築関係者に間違いないでしょう。

面白い事によく見かける建物の完成予想図は少し斜めから見上げた形が多いです。私が言う正面真っ直ぐとは違います。それは予想図なので説明的な要素が含まれています。一面よりも二面を見せた方が情報量的に多いという観点ともう一つはボリューム(簡単には迫力)を出すという事からきていると思われます。プレゼンテーション(提案書)にはこの予想図が使われます。

お気づきだと思いますが美しい建築は全体像を見せる事だけに特化していません。外観もさることながら建物の中からの目線や細部に至るまで計算されたもの集合が全体に及ぶ設計がなされた建物です。ゆえにあるストーリーに従いラインを揃えていくことが重要だと思います。

是非今度、建物を見るときにそのストーリーを見抜き、正面から見てみて下さい。新しい見え方ができると思います。




寿久佐々木


一級建築士・管理建築士
1988.05 ヤマトマネキン環境開発本部
1998.10 設計事務所
2000.11 佐々木設計室 設立
2008.11 アートレ建築空間 一級建築士事務所 設立